はじめに

源ノフォントについて
源ノ角ゴシック/源ノ明朝フォントは、OpenType の CJK フォントです。
一つのフォントに、C(中国語)、J(日本語)、K(韓国語)のすべてのグリフが含まれています。

また、CJK グリフがすべて含まれたフォントファイルの他にも、各言語のグリフのみを抽出した、サブセットフォントが存在します。
OpenType フォントについて
そもそも、OpenType フォントは、グリフの格納に関して、内部で2通りのフォーマットがあります。

CFF欧文用。
各グリフに名前が付けられている。
CIDCJK など用。
各グリフに CID の番号が割り当てられている。

CJK などの、グリフ数が多い言語では、基本的に CID フォントが使われ、欧文などのグリフ数が少ないものでは、CFF が使われます。
(グリフ数が多くても、各グリフに名前を付けて、CFF で格納することは可能です)

源ノ角ゴシック/源ノ明朝は、格納最大数 (65536個) ぎりぎりまでグリフを使用しているので、OpenType の CID フォントとなっています。
CID フォントについて
CID フォントでは、すべての個々のグリフに、CID という番号が割り当てられています。

CID とグリフの定義(文字セット)によって、「CID *** のグリフはこの字形である」というのがあらかじめ決まっているので、フォントの作成者は、その定義に従ってグリフを作成していきます。

CID の文字セットは Adobe が作成しており、そのセットは、「Registry Ordering Supplement (ROS)」で表されます。
日本語では、「Adobe-Japan1-7」などです。

Adobe が Registry(登録所)、Japan1 が Ordering(順序付け)、7 が Supplement(補足)です。
つまり、「Adobe が登録した、Japan1 という日本語の並びで、7 のバージョン」という意味です。

Supplement は、バージョンと同じ扱いになるので、この数値が上がると、前のバージョンにグリフが加えられる形となります。
Adobe-Identity-0
では、源ノ角ゴシック/源ノ明朝の ROS はどうなっているかというと、「Adobe-Identity-0」です。

Adobe が定義している文字セットの中には、CJK すべてを含んだ定義というものは存在しないので、CJK フォントを作る場合、既存の ROS では対応できません。
そういった、規定の ROS では対応できない CID フォントを作成する場合は、「Adobe-Identity-0」を使います。

Adobe-Identity-0 では、CID とグリフに決まった定義はなく、各フォントで好きに CID を割り当るという形になっています。
そのため、Adobe-Identity-0 の CID フォントでは、CID の番号自体にはあまり意味がありません。

ちなみに、ROS は、前者2つは文字列、最後の Supplement は数値として、フォント内に値がセットされているので、定義されていない適当な名前で設定することもできます。

フォント内のデータとしては、CID というのは、ただの備考の番号という扱いです。
Unicode などの文字コードからグリフを描画する際には、別に GID という番号が使われるため、DTP などの CID 番号で文字を指定できるようなソフト以外では、CID はほぼ使われることはありません。
Adobe-Japan1 の CID フォントに変換
現在では、日本語の有料フォントは、Adobe-Japan1-* の CID フォントで作成されている場合が多く、自分でフォントを作成する時にも、Adobe-Japan1 にしたいという場合があると思います。

特に、源ノ角ゴシック/源ノ明朝は、合成フォントを作る際に使われることが多いので、源ノフォントを Adobe-Japan1 に変換して使いたい場合があります。

基本的には、Adobe-Japan1-* の CID に、それぞれ対応するグリフを割り当てればいいのですが、手動で6万個ほどのグリフを割り当てるのは、現実的ではありません。
しかし、AFDKO のツールを使った様々な情報を元にすると、プログラムを使うことで、ある程度自動で割り当てることは可能となります。

源ノフォントを Adobe-Japan1 に変換したフォント自体は、「源ノ味フォント」というものが存在しますが、ここでは、実際の変換手順を、AFDKO の説明も含めて、解説していきます。